カウアイ島とフラダンスの涙

~シダの洞窟で流れた、理由のない涙のわけ~
一度は訪れてみたかった、ハワイの諸島。
なかでも、カウアイ島は、私にとって特別な響きを持っていました。
神聖な場所、シダの洞窟へ
シダが生い茂る神秘的な洞窟。
ここは、かつて王族が結婚式を挙げたという神聖な場所であり、
映画『ジュラシック・パーク』の撮影にも使われた、パワースポットとしても知られています。
小さな遊覧ボートに乗って、ゆるやかな川を進み、洞窟の前へと向かいます。
その途中、数人のダンサーが船上でフラを踊り始めた瞬間──
突然、涙があふれて止まらなくなったのです。
涙の理由はわからない
感動して泣いているのではありません。
悲しい出来事を思い出したわけでもありません。
ただ、わけもなく、涙がとめどなく流れ落ちていく。
まるで、遥か遠い記憶にふれたような感覚。
自分の意志とは関係なく、深い場所からこみあげてくるものがありました。
「ここに来るべくして来た」
そんな確信のようなものが、ただ胸にありました。
号泣する私を、友人はそっと見守ってくれていました。
空港でも、また涙が
この不思議な涙は、そこで終わりませんでした。
帰国前、空港の展示スペースにあった、
古代のカヌーや遺物を目にした瞬間──
また、涙があふれていました。
記憶のように浮かんできた光景
冷静に、その涙のわけを探ってみると、
あるひとつの映像が浮かびました。
――かつて王族に仕え、パワフルで充実した日々を送っていた若者。
仲間とともにカヌーで海に出たある日、
嵐に遭い、懸命に仲間を守ろうとしたが、力尽きてしまう。
大好きな仲間と、永遠に一緒にいられると思っていたのに、
それは一瞬で崩れ去った。
自然とともに生きるということ
その出来事は、悲しいことではあるけれど、
自然と共にあるということは、そういうことなのかもしれない。
自我の力が及ばない瞬間が、人生にはある。
流れに逆らい、どうにかしようと足掻けば足掻くほど、
疲れてしまう。
ならば、抗うのではなく、
流れの中で“自分にできること”を見つけていく。
魂は、永遠に続いていくのなら
体は滅びても、魂はつづいていくとしたら。
運命というものは、決まっているようで、変えられるものかもしれない。
「こうしたら、もっとよくなるかもしれない」
そんな小さな選択が、運命を少しずつ書き換えていくのだとしたら、
生きることは、案外おもしろい。
今の私にできること
思い悩み、悔やみ続ける人生もあるけれど、
私は今、次の人生も見据えながら、
「今できることを、少しでも形に残していこう」
そう決めています。
この不思議な涙の体験が、
私にそのことを深く教えてくれたのかもしれません。