借り物の羽では飛べない 〜コンプレックスからの脱出大作戦

物語のはじまり
イソップ寓話に「孔雀の羽で着飾ったカケス(またはカラス)」というお話があります。
ある日、ゼウスが鳥たちを集めて「もっとも美しい鳥を王とする」と告げました。
黒く醜い自分を恥じていたカラスは、他の鳥が落とした羽を拾い集め、体に貼りつけて美しく着飾ります。
一見すると華やかで、王に選ばれそうになります。
ところが他の鳥たちは「それは自分たちの羽だ」と気づき、次々と羽をむしり取りました。
最後に残ったのは、元々の黒い羽だけ。
――借り物の羽では、王にはなれない。
このお話が教えてくれるのは、そんな教訓です。
コンプレックスが生み出す“借り物”
現代の私たちも、このカラスと同じようなことをしています。
- 誰かの良さばかりを見て、疲れてしまう。
- 自分を認めてもらうために、家族や恋人に褒められたいと願う。
- 学歴や社会的地位、資産やお金があれば価値があると思い込む。
けれどそれは「借り物の羽」をつけるようなもの。
本来の自分を覆い隠そうとすればするほど、自信をなくし、心もすり減っていきます。
脱出大作戦
では、どうやってこの状況から抜け出せるのでしょうか。
私自身の経験を振り返ってみると――
- 好きなものを買って着飾り、満足する。
- 表現して注目を集め、ちやほやされる。
- いろんな経験を積み重ね、幸せを感じる瞬間もあった。
- 自分より優れていると思う人のセミナーに行き、前向きになる本を読む。
けれどある時、ふと気づいたのです。
「ああ、これは本当に心から望んで始めたことではなかったな」と。
その時は確かに幸せだった。
でも、それは一時的な満足であって、根っこからの喜びではなかったのです。
経験がくれた贈り物
けれど、それらもすべてが「無駄」ではありませんでした。
むしろ経験したからこそ、ようやくこう思えるようになったのです。
「あれもいらない、これもいらない。私はシンプルでいい」
今は、年間通して、数少ないお気に入りの服だけで過ごしています。
たとえば料理だって、調味料をたくさん使わなくても、塩だけでもおいしい。
そのシンプルさの中に、本当の豊かさを感じられるようになったのです。
自分の羽を見つける旅
人生は、自分の羽を見つけるための旅かもしれません。
でもその羽は、自分ひとりだけで見つけるものではありません。
縁があって出会った人々、一時的に交わった人々。
その一人ひとりとの経験が、見えない糸のようにつながり合って、
総合作用として「今の私」を形づくってくれているのです。
だから、自分の羽は「私だけのもの」でありながら、
同時に多くの人のエネルギーが織り込まれた羽でもあります。
感謝が羽を軽くする
そのことに気づくと、「感謝」という言葉が自然に生まれてきます。
感謝を抱いた瞬間、心に余裕が生まれ、
「これでいいんだ」と少しずつ自分を認められるようになる。
🌿 借り物ではない、自分の羽で。
あなたはどんな羽で空を飛びたいですか?